プロジェクト概要
ある臓器領域をCT画像から正確に推論する深層学習モデルの開発を行いました。このプロジェクトは、医療分野における画像解析の精度向上を目指し、最新の研究を取り入れつつ独自性を取り入れて実装しました。
技術的アプローチ
まず、最新の論文を徹底的に調査し、最も有力なアーキテクチャを特定しました。深層学習のフレームワークとしては、TensorFlowを選択しました。これは、独自データに対応するための柔軟性と、広範なコミュニティサポートが理由です。PyTorchとその医療画像解析ライブラリであるMONAIも検討しましたが、メンテナンス性や過去の資産を活かす目的でTensorFlowを選択しました。
データの準備と処理
お客様から提供された独自のCT画像データを、学習データおよび検証データとして整備しました。データの前処理には、画像の正規化、リサイズ、データ拡張などの技術を用い、モデルの精度向上を図りました。これにより、モデルが多様なデータに対しても高い精度で推論できるようにしました。
モデルの実装と学習
TensorFlowを用いて、選定したアーキテクチャのネットワーク構造を実装しました。具体的には、U-NetやResNet, Transformerなどの深層学習モデルをベースに、CT画像の特性に合わせたカスタマイズを行いました。学習プロセスでは、ハイパーパラメータの調整や、クロスバリデーションを用いたモデルの評価を繰り返し行い、最適なモデルを構築しました。
モデルの学習には社内のGPUマシン (NVIDIA RTX4090) 1台で1週間ほどの学習時間がかかります。同時に多くの条件を試すため、同様の環境をAWSのG5インスタンスで構築しました。G5インスタンスはP2, P3に比べ安価でありながらメモリ容量が大きいためGPT1枚で行える規模の学習にはコストパフォーマンスに優れています。
コードの納品とメンテナンス
開発したプログラムソースコードは、開発用のマニュアルとともにお客様に納品しました。Pythonで作成されたコードは、メンテナンス性を重視し、argparseなどを活用してコマンドラインインターフェース(CLI)として整備しました。これにより、ある程度のプログラミング知識を持つ方であれば、容易に引き継ぎや開発の継続が可能です。また、学習用のコードだけでなく、検証や解析用のコードも準備し、包括的なサポートを提供しました。
結果と今後の展望
このプロジェクトにより、CT画像から臓器領域を高精度で推論するモデルが完成しました。これにより、医療現場での診断支援や研究の効率化が期待されます。今後も、最新の技術を取り入れながら、さらなる精度向上と新たな応用分野の開拓を目指していきます。